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ハーバード・ビジネススクールでも重要だったのは、自分の情熱をとことんぶつけることだった。

ケーススタディでの発言。

論理的な考察や気の利いた意見は重宝されるが、教授が、クラスのみんなが一番聞きたいことは体重の乗ったパンチ、つまりその人の人生さえも載せている心の叫びだ。

そういった生で熱烈でむき出しの想いが解き放たれて共有されるから、ハーバードのケーススタディは生きもののように学生の心を揺さぶりその教えは根付いていく。冷徹なエリートなんかはいらない。試験勉強がうまいだけでは貢献できない。

実際ハーバードMBAに来ていた同級生たちの多くは、熱い熱い奴らが多かった。

ホッケーのオリンピックでカナダを優勝に導いたチームカナダのキャプテンは、学業からは程遠く、ハーバードMBAに来て初めてパソコンを触るというほど勉強だとかビジネスには無縁な男だったけれど、奴の命を削るような戦いの日々から学んださまざまなこと、そしてその真剣な言葉、生きざまには、クラス全員がいつも心を揺さぶられていた。

ロケット科学者よりIQの高い若いロシア人の金融工学の天才は、誰も考えつかないような発想と鋭い視点を持っていたけれど、結局奴の発言のすべてがとても優しく、1人の人間としての思いやりと、自分を等身大に見つける真摯さに満ちたもので、クラスに本当に大事なものは何かというさまざまな気づきを与えてくれていた。

イギリス人で元全英大学代表ラグビーチームのキャプテンは言葉少なで寡黙だったけれど、仲間のために誰よりも果敢に突っ込んでいく奴だった。ハーバードMBAのラグビーチームの試合中に指の骨を折ったときは、鎮痛剤を差し出すアメリカ人チームメートに「オマエらみたいにすぐに痛み止めを飲むような女みたいな人種じゃないんだよ」と笑ってテーピングだけ巻いて戦い続けた愛すべき英国人は、007のように「ぐちゃぐちゃ言っていないで行動するんだよ」という迫力にみなぎっていた。

生き馬の目を抜くような金融界で有名だったアメリカ人は、多国籍からなるクラスにアメリカ人としてさまざまな行事を提案・実行し、ダディーと呼ばれてクラスをまとめてくれる奴だった。ダディーの献身は、決してアメリカが傲慢で身勝手な国というわけではないことを身をもって感じさせてくれていたし、アメリカ式の「思いやり」を体現していた。

そして、僕の近くの席にずっと座っていたメキシコ人のカルロス。僕と同じように大して勉強や仕事ができたわけではないが、宴会を仕切ることに関してはラティーノの中で、いや西の世界をひっくるめても誰にも負けないエンターテイナー。いつも笑いを起こしていて「おいおい、そんなに真剣になるなよ」という人生の喜びや楽しみをまとって周りをなごましていた。

熱いこと、人に優しいこと、そして自分の挫折も弱みもさらけ出すこと。

それが素直に評価される場所だった。もがいても、真剣に、熱く、優しく生きていること。

懸命に生きてきた経験、自分の弱みや悩み、失敗談、それらをさらけ出し、他人と共有しそして一緒に学習していく。それが叶ったときケーススタディという授業は天を駆け巡る生き物のように真の力を発揮し、授業を超越する本当の学びが巻き起こるのである。

そんな場所だった。

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「パンツを脱ぐ勇気」 児玉教仁