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花口は、治療のときにはいつも、大内が妻に語りかけた言葉を必死で思いだしていた。
「愛している」という言葉だった。
「奥さんに語りかけていたころの大内さんを思い出しながらでないと、ひどくなった状態で寝ている大内さんを見ても、大内さんと思えなかったんです。思えないのがまたつらいので、一生懸命、笑いながら楽しそうに奥さんに「愛してるよ」と言ったころの大内さんを思い出そうとしたんです。「ああいうふうに一生懸命いろんなことを伝えようとしていた大内さんなんだよ」って思いながら、大内さんに接していたんです」
そう思いながらも、花口は考えずにはいられなかった。
「ここにいる人は何なんだろう。だれなんだろうではなく、何なんだろう。体がある、それもきれいな体ではなくて、ボロボロになった体がある。その体のまわりに機械が付いているだけ。自分たち看護婦は、その体を相手に、次からつぎに、その体を維持するために、乾きそうな角膜を維持するために、はげてきそうな皮膚を覆うために、そういう処置ばかりどんどんつづけなければならなかったんです。自分は一体何のためにやっているんだろう。自分は別に角膜を守りたいわけではない。大内さんを守るためにやってるんだ。
そう思わないと耐えられないケアばかりでした。大内さんを思い出しながらでないと、自分のやっていることの意味が見いだせないような、そんな毎日でした」
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