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僕は一人ひとりの目を順番に見るようにして言った。特に伝えたかったのは集中している選手のペースを乱すような発言をする若手の姿が目についたため、そのことについてはどうしても言いたかった。

「アジアカップを取りたいっていう気持ちを、もう1回、全員で同じ方向に持って行こう。今のままじゃ絶対にアジアカップは取れない。まず練習で厳しさが足りない。試合へのアプローチの仕方もそうだ。2日前から集中して入りこむ奴もいるし、逆に試合直前にスイッチを入れるやつもいる。人それぞれだから別に楽しくやってもいいが、もっと周りに気を遣うべきなのではないだろうか。やるときはやるという、オンとオフを使い分けろ」

一部の若い選手たちはA代表の経験が少なく、代表の空気に慣れていないのは分かっていた。彼らがユース年代の日本代表でやってきたやり方をそのまま続けようとするのも理解できる。さらに見方を変えれば、僕たち年長者が若手をピリッとするような緊張感を、チームに作り出せていないということでもあった。反省点はお互いにある。それを踏まえたうえで僕は話を続けた。

「アジアカップのような短期決戦では総力戦になるはずだ。誰もが『自分も日本代表の一員なんだ、絶対に自分も試合に出るんだ』っていう自覚を持ってやってほしい。僕はジーコさん、オシムさん、岡田(武史)さんのもとで代表を経験したけれど、今回ほど緊張感のないチームはない。緊張感があればいいっていうことではないけれども、ふざけるのと明るくやるのは紙一重だ。若い選手が明るくやるのはすごくいいと思うし、その持ち前の明るさをなくしてほしくはない。けれども、試合や練習でふざけるのとは区別してほしい。これまでは年長者が緊張感を作り出してくれていたから、今、緊張感を作れていない原因は自分たちにもある。自分の非も認める。今後はそれを意識してやっていこうと思うから、みんなも協力してほしい」


(中略)


ミーティングで強く言った分、若手選手との間に緊張感が生まれる恐れはあった。先ほど、「多少の溝は致し方ない」と書いたが、やはり溝などない方がいい。僕はよく真面目そうだとか、堅いと言われるので、あのミーティングでその印象は強まってしまったかもしれない。

「堅すぎるのもよくないな。今までどおり、サッカーから離れたら、ふざけたり、冗談を言って空気を和らげたいな」

そう思っていた。だが、それは杞憂だった。

オフの時間になると、僕は普通のキャプテンではありえないぐらい、年下の選手にからかわれた。たとえば、こんなギャグが一部の若手で流行った。食事のとき、まず一人が、

「お茶碗に米粒残っているじゃないか。最後の一粒までしっかり食べろ!」

と言う。するとその言われた選手が、

「おまえは、ハセベか!」

と突っ込むのだ。まるでタカアンドトシの「欧米か!」のツッコミのように・・・・・・。つまり、「小うるさい、真面目=長谷部」というのをネタにしているのだ。

エレベーターに若手たちと乗り合わせると、ふざけて、

「おい、2日前から集中している選手がいるんだから、しゃきっとしようぜ」

と言い始める。僕はこの本で書いてきたように、試合直前にスイッチを入れるタイプなのに、完全にミーティングの話をネタにされているのだ(翌日、締めときました)。

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「心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」 長谷部誠