"しかし、実際には、個人とその他の人々や道具、コンテキスト、環境といったものは、一方が他方に影響を与えるといった一方向的な関係というよりは、お互いにお互いを作り出すような相互的な関係をなしている。たとえば、私たちをとりまく他の人々は私の環境であるというだけではなく、私は他の人々の環境にもなっているのであり、私たちは、お互いに環境なのである。私たちの行為と環境の関係はどうであろうか。この場合、環境を作り替えたり、デザインすることはある行為によってなされるが、その行為は、作り替えられた環境によって可能になるのであって、ここでも、行為と環境の関係は相互的なものである。そして、社会や文化を可視化したり、記述することも、また、社会や文化を作り替えたり、デザインすることの一種である。私たちは、ある社会や文化のもとでそれ自体を記述するが、そうした記述は、また、私たちをとりまく社会や文化といったものの一部になるのである。"

「仕事の中での学習 状況論的アプローチ」 上野直樹