弁護士になったばかりのころ、コピー取りばかりやらされたことがある。

私は「コピー取りをするために弁護士になったのではない!」と、不満が日に日に強くなっていった。

そんなとき、年輩のある経営者からこう言われた。「今、与えられた仕事で一番になれ。それが日本一の弁護士になる早道だよ」。

私はガンと殴られたような衝撃を受けた。そのとおりである。

なぜ私がコピーを取らされているのか、その理由があるはずだ。そのコピー取りの仕事における「ゴール」と「全体像」を考えなければいけなかったのだ。それによってコピーの取り方だって違ってくるはずだ。たかがコピー取りだと考えていた自分を恥じた。

のちに、自分が人の上に立つようになって初めて気づいたのだが、コピーの取り方一つでその人がどれだけ仕事ができるか、一瞬でわかるものである。顧客に差し出す大事な資料であるにもかかわらず、ゆがんだままコピーを取っても平気な人には、雑な仕事しかできない。

それに、私は新米の未熟な弁護士だ。与えられた仕事さえきちんとクリアできない、そんな低いレベルの自分が、この仕事は自分に向かないとか、こんなつまんない仕事をしていても無駄だと判断できるわけがない。

そんな判断をすること自体、ひじょうに傲慢なことではないか。

発展途上の自分なのだから、本来はまだ判断できるレベルにはない。自分には無駄とか有効といった判断ができる能力はないと思わなければならない。

与えられたものは有効なはずだと信じて、その前提で全力を投入して取り組む。そうすれば得られるものがあるだろう。そうでなければ、身につくべきものが身につかないのだ。

「夢をかなえる勉強法」 伊藤真